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第8回:ゆとりローン

サブプライムローンがきっかけで世界中が金融危機に瀕しています。このサブプライムローン問題は、アメリカ合衆国において低所得者向けの住宅ローンが焦げ付いた点に端を発しています。ところが日本でも、旧住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)の「ゆとりローン」といわれる住宅ローンが1993〜2000年にかけて低所得者を中心に貸し出されており、この住宅ローン返済をめぐって日本でも問題となっています。そこで今回は「ゆとりローン」の失敗事例についてお話します。


ゆとりローンの失敗事例

高橋さんは10年前の1998年に住宅ローンでマイホームを建てました。当時の年収は480万円で、購入した物件は3,000万円のマンション。最初の5年間は支払い金額が少なくて済む「ゆとりローン」を住宅金融公庫から借りることにしました。この制度は、6年目と11年目に、段階的に毎月の支払額が増えることになります。そのため、高橋さんは将来月額の支払額が増えたときに返済を続けていけるか心配でしたが、住宅ローンの担当者からは「いま毎月支払っている賃貸と同じ値段でマイホームが手に入りますよ。それに、年収は将来上がるでしょうから心配はしなくて大丈夫でしょう」と勧められたので、購入を決意しました。

さて、住宅を購入して5年たった2003年のある日のこと。1つの衝撃的な事件が起きます。5年が経過したことを高橋さんはすっかり忘れていたため、毎月の返済金額が突然上がってしまったのです。最初の5年間は8万円だった支払い金額が、6万円増えて毎月14万円になりました。実は、高橋さんの勤めている会社は不景気の影響で業績がふるわず、高橋さんの給料は5年前とほとんど変わっていなかったため、毎月6万円の上昇はあまりに重い負担でした。それでも何とか必死になって毎月の生活費を切り詰めて、ギリギリの生活をして乗り切っていましたが、11年目にあたる今年(2008年)に月額の返済額が更に上がり、毎月の支払いが23,000円増えて163,000円となってしまいました。相変わらず高橋さんの給料は上がることはなく、一方で子供の教育費はどんどん増えていき、家計の切り詰めはもはや限界を超えてしまいました。

不動産屋に行き、自分のマンションを売却することも相談しましたが、不動産相場も下がっており、例え売却できたとしてもローンは1500万円も残ってしまいます。
今高橋さんは自己破産をしようかどうか悩んでいるところです。


「ゆとりローン」ってどんな制度?

ゆとりローンとは、1993年に当時の住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)が提供を始めた融資であり、この制度は若くて所得が低い人にも住宅が買えるようにするため最初の5年間は毎月の返済額をできるだけ抑え、年齢が上がって収入が増える頃に毎月の返済額を増やすという前提で作られたものです。
ゆとりローンの具体的な計算方法は以下のようになっています。

  1. 最初5年(1〜5年目)を低い金利で、かつ期間75年の借入として計算(1995年からは期間50年に変更)
  2. 次の5年(6〜10年目)を低い金利のままで期間35年として計算
  3. 残りの期間(35年ローンであれば11〜35年目)を高い金利で計算

これを1998年に先ほどの事例でご紹介した高橋さんの返済プランを図で表すと以下の通りになります。

高橋さんの「ゆとりローン」支払いプラン

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ゆとりローンの場合、たしかに最初の5年間は支払額が少なくて済むのですが、支払い額全体が減るわけでは決してなく、本来支払いをしなければならない分を先送りしているに過ぎないのです。そのため、5年後や10年後に返済額が上がることを前提に家計をしっかりと管理しておかないと、最初のうちは返済ができても後になってから返済額が上がると生活が急に苦しくなってしまいます。

ちなみに、住宅ローンを組む際に、「物件の購入限度額は年収の5倍まで」「頭金は購入物件の20%以上」という2点が一般的な目安となりますが、高橋さんの場合は購入物件が年収の6倍以上あり、また頭金もないため、支払利息が多くなってしまいます。また更に最初の5年間は支払金額を低く設定しており、5年が経過した時点ではほとんど元本が減っていないため、余計に支払利息が多くなってしまっています。

つまり住宅ローンの一般的な目安から考えても、高橋さんのプランは将来の支払いにおいて無理が生じる可能性がある、危険性の高い返済プランであったと言えるのです。


2008年問題!?「ゆとりローン」の恐怖が再び・・

この「ゆとりローン」は、実はもともと給料が上がることを前提に作られた制度でした。1980年代までであれば、日本では年功序列や終身雇用制が定着していましたので、会社に長く勤めればほとんどの人は勤続年数とともに給料が上がっていくのが日本の常識でした。ところが、バブル崩壊後の長い不景気の時代を迎えると倒産する会社も増え、日本の会社も余裕がなくなってしまいました。そのため、これまでの年功序列・終身雇用制度から能力主義に移行する会社が増え、人によっては給料カット、あるいはリストラをされてしまう人も出てきました。その意味で「ゆとりローン」はかえって生活に余裕のない人たちを更に苦しめる結果となってしまいました。実際、この制度が今お話したような大きな問題を抱えていることに政府も気付き、2000年に住宅金融公庫は同制度の廃止を決定しました。ところが、この「ゆとりローン」が再び2008年頃から問題になってきたのです。

では、いったい2000年に廃止になったこの制度がなぜ2008年に再び問題となるのでしょうか。実は、1998年は住宅金融公庫の貸出金利が2.55%から2.0%に下げられ、借入条件も年収400万円から300万円に引き下げられたため、低所得者層からのローン申し込み件数が急激に増えた年なのです。2000年にゆとりローン自体は廃止となり、新規の申し込みはなくなりましたが、2000年以前に申し込んだ人たちは今も支払いを続けています。つまり、多くの人がゆとりローンを使って1998年に借り、その人たちは2003年に返済額アップを経験しており、そして2度目の更なる返済額アップが2008年に到来するのです。したがって、「ゆとりローン」自体は既に廃止されてはいるものの、本格的に問題が発生すると予想されるのは、まさに2008年〜2010年というわけです。

特にゆとりローンを今も使っている人がいれば、いま一度ご自身の返済プランについて「いつ頃」「いくらぐらい」が上乗せになるのかについてご確認されることをお勧めします。また、もし万が一ご返済が厳しそうであれば、銀行窓口や住宅金融支援機構もしくは、ファイナンシャルプランナーなどに早めにご相談してみてはいかがでしょうか。


執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFPR、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。

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