お金の失敗談

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第9回:信用取引

株取引は、自分のお金で株を売買するのが一般的ですが、最近では信用取引も一般の投資家の間で広まってきました。信用取引であれば元手の2〜3倍の取引を行うことも可能であり、最近では書店でも信用取引で大儲けをする方法が書かれた本がたくさん売れているようです。しかし、この信用取引は短期的に大儲けができる可能性がある反面、気をつけないと一気にお金を失ってしまう危険性もはらんでいます。そこで今回は信用取引に関する失敗事例を考えてみたいと思います。


信用取引で大損

柴田さんはネット取引を1年前から始めました。最初は自分の貯金の中から株式投資をしていたのですが、もともと柴田さんは貯金があまりなかったため取引できる金額も小さく、物足りなさを感じていました。そんなある日、友達から「信用取引」を勧められました。信用取引ならば元手が少なくても大きな取引ができ、しかも株価が下落している局面でも儲けることができる、とのことだったので、柴田さんは早速信用取引の申し込みをしました。

柴田さんの最初の手元資金は40万円。資金の3倍まで取引が可能なため、120万円が取引可能な額です。最初のうちは柴田さんの予想が面白いように当たり、半年でなんと2倍以上の100万円まで資産を増やすことができ、取引可能な額は100万円の3倍、つまり300万円になりました。そこで、現在株価が300円のA株が下がると予想した柴田さんは、A社の株10,000株を信用売りしました。

ところが、これが悲劇の始まりでした。

柴田さんの予想に反して株価が400円、450円とどんどん上がっていきます。株価がそのうち下がるのではないかと思い、損切りをしませんでした。しかし、更に株価はどんどん上がっていき、柴田さんの損失は大きくなる一方です。結局300円から500円まで上がった時点でようやく損切りしました。すると、なんとせっかく増やした100万円を失っただけでなく、新たに100万円も借金を背負ってしまいました。まさか元手を失い、さらに100万円もの借金を負うとは思ってもいなかった柴田さんは大変なショックを受け、今は生活を切り詰めながら少しずつ借金を返す毎日が続いています。


信用取引って何?

信用取引とは、証券会社に一定の保証金や株式などを担保として預け、その担保金額以上の株式を売買できる仕組みを言い、証券会社に証券取引用の口座を作って取引を行います。取引可能な額は証券会社によって違いますが、口座資金の2〜3倍での取引が可能です。

信用取引には「信用買い」と「信用売り」の2つがあります。以下の図をご覧下さい。

(図1)信用取引

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信用買いの場合は、株を買うためのお金を投資家に貸してくれます。例えば、借りた50万円で500円の株を1,000株購入した後、株価が800円まで上がれば80万円で売れることになります。ただし、50万円は借りていますので、あとで返さなければなりません。つまり、80万円から借りた50万円を差し引いた30万円が儲けとなります。

それに対して信用売りの場合は、お金ではなく株を貸してくれます。500円の株を1,000株借り、その株を売ると現金50万円が手に入ります。ただし、1,000株は借りていますので、あとで返さなければなりません。その後、株価が300円まで下がれば、30万円で1,000株を買い戻すことができます。買い戻した株1,000株を返却すれば、手に入った50万円から買い戻した30万円を差し引いた20万円が儲けとなります。

つまり、信用買いと信用売りのそれぞれの特徴は以下のようなことが言えます。

信用買い ⇒ 株価の上昇局面で儲けることができる
信用売り ⇒ 株価の下落局面で儲けることができる

ただし、当然のことながら逆のことも考えられます。つまり信用買いであれば、株価が下がると、あるいは信用売りであれば株価が上がると損をすることになります。今回の柴田さんの例で言えば、信用売りを行ったにも関わらず、株価が上がってしまったために損失が発生してしまったのです。

では、今回の柴田さんの失敗はどこにあったのでしょうか。そこで、次に柴田さんの失敗を振り返ってみましょう。


柴田さんのケースを振り返ってみよう

柴田さんのケースにおいては、大きく分けて2点の問題点がありました。

ます1点目として、柴田さんは借りられる限度額まで借りて信用取引を行っていたことです。限度額いっぱいまで借りたということは、うまく行けば3倍の儲けが得られるということになりますが、逆に言えば損をした場合には損失が3倍膨らんでしまうということも言えるのです。ちなみにもし自分の持っている100万円だけで取引を行っていれば、100万円÷300円≒3,300株しか購入できませんので、300円から500円に上がったとしても株の買い戻し価格は3,300株×500円=165万円。一方、持っているお金は最初の100万円と、300円のときに3,300株を売った代金99万円併せて199万円。柴田さんの手元には差し引き34万円残るため、借金はしなくて良かったはずなのです。つまり、3倍の取引ができるということは、それだけ危険性も大きくなることを認識すべきだったということが言えます。

2点目に、必ずロスカット(損切り)のルールを予め決めておかなければならなかったことです。

(図2)柴田さんの「信用売り」のケース

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上の図を見ればわかるかと思いますが、信用売りの場合は株式を後で買ってから返却しなければなりませんので、株価がどんどん上がっていけば、損失は無限大に膨らんでいってしまい、とても危険です。そのため、「株価がいくらになったらポジションを戻す」ということをあらかじめルール化しておかないと大きな失敗につながってしまうのです。ちなみに400円でロスカットを設定しておけば、手元資金の100万円は失ってしまいますが、借金をする必要はなかったはずです。つまり、柴田さんが300万円という大きな借金を背負ってしまった一番の大きな理由は、この2点目のロスカットルールを定めなかった点にあるといっても過言ではないでしょう。


リスクを知ることが重要

信用取引自体は決して悪いものではありません。しかし、他人から株やお金を借りて取引をするわけですから、いつか必ず返さなければならず、当然リスクがあるわけです。しかも、信用取引であれば通常の2.5〜3倍の取引ができるわけですから、儲けが大きい分、損をするときも大きくなります。特に信用売りの場合は、株価がどんどん上がっていけば、損失は青天井になってしまいますので、注意が必要です。

信用取引に限らず、リスクがどれだけあるのかを自分で把握できない場合においては投資をお勧めしません。最近書店で「信用取引で大儲けをしよう」という本が溢れていますが、それはあくまでうまくいった場合のお話であり、その背後には大きな危険が隣り合わせであることをしっかりと認識しておきましょう。


執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFPR、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。

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